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FUKUOKA BEAT REVOLUTION

高塔山伝説は継続していく――プロデューサー・倉掛“HIDE”英彰が語る2020年の“幻”の『高塔山ロックフェス』への思い


『今は静寂こそロックなんだ』、こんな記事が“九スポ”こと、九州を代表するスポーツ新聞『九州スポーツ』(東スポの九州版)の9月7日号に掲載された。新型コロナウイルス禍がなければ、この9月に第4回が開催される予定だった福岡県・北九州市の『高塔山ロックフェス』の中止を改めて知らせる報道だった。

北九州を代表するロック・フェスティバル『高塔山ロックフェス』。その前身『高塔山JAM』(通称“T-Jam”)は2004年から2015年まで福岡県北九州市若松区高塔山野外音楽堂で開催されている。同所は北九州のバンドにとっては聖地(数多くのバンドが同所を練習場にし、そこでたくさんの出会いがあった)のような場所で、「高塔山でロックがしたい」というシーナの一言から“T-Jam”が始まった。呼びかけ人だったシーナが2015年2月に死去し、同年9月の追悼開催をもって終了している。“T-Jam”にはシーナ&ロケッツ、横道坊主、石橋凌、池畑潤二、花田裕之、井上富雄などの他、TH eROCKERS、柴山俊之、南 浩二、ROLLY、ダイアモンド✡ユカイ、PERSONZ、MOTO-PSYCHO R&R SERVICEなども出演している。その復活を望むファンからの要望を受け、2017年9月に『高塔山ロックフェス』として再開することになった。

昨2019年にはシーナ&ロケッツ、大江慎也(Shinya Oe And Mothers Sunshine)、ROCK'N'ROLL GYPSIES、Respect up-beatなどが出演し、“高塔山伝説”は継続していることを証明してみせたのだ。


“九スポ”の取材を受けたのは同イベントのプロデューサーであるHIDE(現ミーナ&ザ・グライダー)。彼は1960年6月28日生まれ。北九州市若松区出身である。大江慎也、池畑潤二などが在籍したバラ族への参加経験を持ち、1974年にNEW DOBBを結成。1986年に上京し、笹路正徳プロデュースによるシングル「パラレルワールド」でテイチクレコードからデビューしている。ソングライターとしても沢田研二などに楽曲を提供するなど、活躍。2003年に北九州に帰郷、2012年に愛妻、ミーナと『ミーナ&ザ・グライダー』を結成。バンド活動とともに福岡、北九州を中心にイベントプロデューサー、ソングライター、音楽プロデューサー、FM番組のナビゲーターなどとして活躍。彼自身が北九州の伝説のようなアーティストである。今回の中止について、改めて、彼の言葉で語ってもらった。



「1月にはラジオ(https://youtu.be/_RURts7wwFY)で発言しているとおり、フェス・プロデューサーの立場として、新型コロナに関しての情報収集には、かなりの時間を費やし警戒を強めていました。2~3月と状況を見ながら、通年ならばすでに予算確定時期という中、協賛各社回りも不可能であったことはもちろん、全てにおいて不確定な要素が多すぎる中での各バンドスケジュール確保への疑問、来場者も含めた未知な健康侵害の可能性を考え、4月初旬には鮎川氏を始め、関係者に開催断念を伝えていました。(公式発表は4月18日)もちろん残念な思いは多々ありましたが、目先にとらわれずその先をイメージすることの大切さは、長い音楽人生の中で、少しは身についている気がしています。ちなみに、静寂こそ…やSTOP THE MUSICのくだりは、オフレコですが記者さんのイメージです(笑)。たとえ今年の高塔山は無音でも、ロックの聖地は永遠に鳴り止まない…! やるときはやる。やらない時はやらない。決断することこそロック…的な表現をした気がします」

彼の中では第4回の開催に際して、既に構想もあったという。今年、2020年はルースターズ・デビュー40周年。「もちろん池畑氏には40周年にちなんだ内容をオーダーするつもりでしたが、残念です」と続ける。

『高塔山JAM』から『高塔山ロックフェス』へ……“高塔山”への思い、それは“恩返し”でもあるという。

「シーナさん追悼開催となった2015年をもって、その“T-JAM”自体がフェス本来の目的を失ったことで幕は降ろされました。しかし終演後にSNSを通じて地元ロックファンはもちろん、全国の高塔山ファンからも次々と再開要望が自分へと届いた時は、とても心揺さぶられるものでした。世代を超えた“何かを残す”ことが重要で、シーナさん、ルースターズから始まった北九州『高塔山ロック』をもう一度、全国へと伝えることを目的に、開催を決めました。俺自身が音楽の道へと進むきっかけは、間違いなく鮎川 誠&シーナ夫妻、ルースターズの面々との出会いに他ならず、その恩はこの『高塔山ロックフェス』で、次世代へと繋げていくことでしか果たせない。そう確信しています。

また、帰郷直後の2005年、HIDEが地元タウン誌『おい街』(『おいらの街』)の依頼で制作した『未完の北九州音楽図鑑』から繋がった『N9S』、彼らがコロナ禍で立ち上げたライブハウス支援『N9S ROCKMUSEUM』(膨大な北九州出身バンド音源アーカイヴ)の動きをとても嬉しく感じています」




◎『高塔山伝説』

◎『N9S ROCK MUSEUM』

HIDEは前述通り、北九州市若松区出身。シーナ&ロケッツやルースターズなど、“地元出身”のバンドへの思いは強い。そして福岡と北九州は音楽都市としての在り方が微妙に違うともいう。

「北九州のバンドマンからみると福岡はメディアの集中する街、全国への扉でした。つながる国道3号線(ルート3)は、北九州のバンドマンにとって、いつでも夢の架け橋でした。福岡という発信地を近隣に持つ北九州は、マンチェスターやデトロイトに例えられるロックシティ。モノづくりの街として、ブレないその錆びた鉄色の音こそが、全国を席巻したバンドに通じる共通項。一方で商業的な物差しにおいて、歴史的な商いの街として栄えてきた博多には敵うはずもなく、あらためて人と街、その歴史や文化がロックの世界にも直結することに興味は尽きません」

◎錆びた鉄色の音

勝手に北九州ロックの完成形と呼んでます(笑)

NEW DOBB(テイチク 1987)

福岡ではチャリティーアンセム「BEAT GOES ON」が作られた。もし、北九州で作られるとしたら、どんなものになるのだろうか!?

「いまや多ジャンルに渡るミュージックシティ福岡、オール九州輩出の豊富な人材と多くのメディアを繋ぐこのアクションは、とても興味深く感じています。もちろん北九州人が含まれている事も前提なのですが、どうぞ全国へと飛び火する事を期待しています。一方で、高塔山ロックフェスの切り口だと全く違うエッセンスになるであろう事実は否定しません(笑)。やってみたい気もしますが…」

最後に北九州から全国へ、このコロナ禍に直面するバンドやファンに向けて、メッセージを貰った

「人それぞれには違うバックボーンがあるものです。考えや方向性も多種多様だと考えます。有事の際は特に、お互いのその姿勢を否定することなく、尊重こそがこれから先の『力の源に』なっていくことを希望します。試練の時期ですね。今はじっくりと次の時代に向けての準備をいたしましょう。『神は細部に宿る』そういう意味では元来職人気質の多い北九州人にぴったりの時期だと思います。前向きで楽しい毎日にしたいものです。アフターコロナの高塔山で逢いましょう!」

HIDE自身はラジオ&YouTube番組『ミーナ&ザ・グライダーのSunny Day Special』を文化庁『文化芸術支援事業』として開始している。高塔山ロックフェスの紹介はもちろん、ミーナ&ザ・グライダー楽曲を使って、ひと味違うロックミュージックの楽しみ方の紹介がコンセプト。次世代のロック・クリエイター達にも聴いてもらいたい内容となっているという。


2021年の『高塔山ロックフェス』がどんなものになるのか。また、9月に高塔山に集まれることを祈る。きっと、北九州人の熱い思いと職人の気質があれば、それは実現するのではないだろうか。北九州のBEATの革命を確認してもらいたい。高塔山伝説は継続していく――。











◎『ミーナ&ザ・グライダーのYouTubeチャンネル』


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