既に『福岡BEAT革命』のFBページでは 7月30日(土)、31日(日)に札幌で行われたKJ&トントンマクートの札幌ツアー“ROCK&ROLL SUMMER 2022”の模様を報告している。穴井仁吉の“欠席”という“波乱万丈”の札幌ツアーだったが、この8月11日(木・祝)に福岡、12日(金)に熊本で行われるEli and The Deviantsの九州ツアー “Road to nowhere TOUR 2022”を前に改めて、本ホームページでも紹介しておく。実は穴井は九州ツアーも不参加になる。しかし、安心して欲しい。いかに彼らが窮状を乗り切り、ツアーの成功へと導いたかがわかるはず。
穴井の“穴”は岡本雅彦が埋める――KJ&トントンマクート札幌ツアー“ROCK&ROLL SUMMER 2022” DAY1
リアル“You’ve got a friend”か。7月30日(土)、31日(日)に札幌「Crazy Monkey」で予定していたKJ&トントンマクートの2DAYS。穴井仁吉(B、Vo)が怪我のため、出演できなくなってしまった。そんな窮状を救ったのが彼らとは旧知の中で、共演も多い、WILD CHILLUNの岡本雅彦(B、Vo)だった。
穴井の怪我の報を受け、2日前に急遽、参加が決定。下山淳(G、Vo)と延原達治(Vo、G)、そして今回は“KJ”として参加する梶浦雅弘(Dr、Vo)は前日、7月29日(金)に札幌入りし、リハーサルをしているが、岡本はライブがあったため、同日は参加できず、当日に会場入りになる。ライブ当日も飛行機が“航空祭”の影響で、飛行機渋滞(!?)によって新千歳空港に到着するも飛行機からなかなか出ることができなかったらしい。多少、遅れるものの、無事に札幌に辿り着き、「Crazy Monkey」のリハーサルに合流することができた。まさに離れ業、見事に至難を乗り切り、この日、上々のステージを繰り広げることになるが、岡本は声をかけてもらい、“嬉しかったし、光栄なことです”と言う。岡本はアンジーのメンバーとして知られている。山口出身ながら福岡のロックシーンから飛び出した。福岡のロックには人一倍、こだわりがある。奈良敏博や井上富雄、穴井仁吉らとも以前から親交があり、彼らは岡本のアイドルでもある。実は岡本はプライベーツの初期に在籍していたが、その時に延原には内緒(笑)でTHE ROOSERZのベースオーディションを受けたという。そんな穴井の代役である。こんな嬉しいことはないだろう。
危機一髪、起死回生の偉業を成し遂げたのはセットリストに上がる曲がいずれも彼らの血や骨になるストーンズやドアーズ、マディ・ウォーターズなどのルーツロックや彼らの成長の糧となったサンハウスやシーナ&ロケッツなどの福岡発のビートミュージックだったからだろう。曲目を聞いただけで譜面を見ずとも演奏できる。リハーサルも短いながらそれらの曲は一瞬にしてKJ&トントンマクートの曲になっていき、独自のグルーヴを紡ぐ。
穴井仁吉のいないことで、毎度、お馴染みの行き先不明、落ちなしの彼のトークの真骨頂「穴井仁吉ショー」は見ることはできなかったが、その分、メンバーが彼をネタに笑いを取るという、その存在感は流石である(笑)。
延原は“質実剛健、体育会系のライブになったかもしれない”というが、それはそれで歌や曲の良さが際立ち、彼らの魅力がより見えやすくなったと言ってもいい。圧巻で圧倒的なステージを見せてくれた。全員が歌うというトントンマクート。普段、あまり歌わない梶浦雅弘のプライベーツの「リメンバー」のカヴァーという“絶品”も聞くことができた。もっと、歌ってもらいたいものだ。
「CrazyMonkey」は、すすきのの中心にある。周りにはホストクラブやガールズ・バー、Club、風俗店、飲食店――など、魅惑的な店(笑)も多く、誘惑もあるが、KIDS達の目的はKJ&トントンマクートである。脇目も振らず、「CrazyMonkey」を目指す。KJ&トントンマクートの熱演を地元の人達が温かく見守る。いかに彼らを愛しているかが伝わる。それはTHE ROOSTERS(Z)やTH eROCKERS、THE MODSなどがしてきたことがちゃんと北海道の地に根付いていることの証だろう。同所はいまも梶浦がTHE ONE NIGHTSのライブや石橋凌のサポートで度々、演奏しているところでもある。来るたびに熱烈な歓迎を受け、札幌には彼らの熱狂的な支持者も少なくない。
この日のオープニングアクトを務めた地元のバンド、BLIND LAW CARBURETOUR。同店の中田聡店長のブッキングだが、なかなかの差配ぶり。彼らは3人組でTHE JAMやTHE MODSを彷彿させるポップでいてエッジの立った歌と演奏が魅力だが、彼らからは福岡発のビートミュージックへのリスペクトが感じられる。楽屋でも緊張しつつも真剣に話を聞いていたのが印象的だった。
セットリストは日替わりである。今日は誰がどんな歌を歌うのか、明日は誰がどんな歌を歌うのか、それも楽しみなところ。意外な人の意外な熱唱、期待してもいいだろう。それにしても穴井仁吉もこのステージを見たかったはず。トントンマクートは何が起こるか、わからない。予定調和ではなく、行き先不明が穴井のトーク同様、ロックの醍醐味かもしれない。蛇行や暴走を繰り返しても彼らは私たちの期待を裏切らない。
札幌が福岡になる――KJ&トントンマクート札幌ツアー“ROCK&ROLL SUMMER 2022” DAY 2
7月30日(土)、31日(日)に札幌「Crazy Monkey」で開催されたKJ&トントンマクートの札幌ツアー“ROCK&ROLL SUMMER 2022”。
“トントンマクート”は下山淳(G、Vo)と穴井仁吉(B、Vo)のユニット「穴山淳吉」を母体にプライベーツの延原達治(Vo、G)、元ズクナシの佐々木茜(Dr、Vo)を加え、「アカネ&トントンマクート」として、この5月にデビューを飾っている。
札幌ツアーは茜に代わり、梶浦雅弘(Dr、Vo)がKJとして参加、KJ&トントンマクートとしてステージに立つが、別に茜が脱退したわけではない。札幌の会場である「Crazy Monkey」の中田聡店長にTHE ONE NIGHTSのライブや石橋凌のサポートなどで度々、同所に出演している梶浦と、同じくプライベーツやソロなどで同所に出演している延原で、セッションをして欲しいという依頼を受けたことから始まっている。
KJ&トントンマクートとしての札幌デビューだが、穴井仁吉の怪我のため、急遽、岡本雅彦がピンチヒッターとして参加。KJ&トントンマクートは友人の力を借りて初日を見事に乗り切った。そして2日目も岡本が初日に続き、完璧なまでに穴井の“穴”を埋めることになるのだ。
ライブの前日にメンバーは札幌入し、リハーサルを行っているが、梶浦自身もトントンマクート初参加のため、まずはそこで音を固める必要があった。しかし、岡本は同日にライブの予定があったため、彼だけは前日のリハーサルは不参加。ライブ当日に札幌入りすることになった。会場入りしていきなり本番。4人が揃ってのサウンドチェックやリハーサルの時間はごく僅か。何しろ、全員集合が本番直前。そんな至難や困難を乗り越え、穴井の代役を見事に務め上げたものの、KJ&トントンマクートとしても演奏するだけで精一杯のところもあったかもしれない。そんな時間不足を補い、微調整するのが2日目のリハーサルだった。メンバー全員が午後2時過ぎに会場入り。1時間30分をかけて、イントロのフレーズや歌の入りの順番、アドリブの間合いなど、音や曲の構成を再検討しつつ、よりKJ&トントンマクートらしい音に仕上げていく。リハーサル自体は冗談を言いつつ笑い声があふれ、笑顔のこぼれるものだったが、音に向き合う姿勢は最高にして最強のミュージシャンらしく、真剣そのものである。出音からしてリハーサルとは思えない迫力があった。
リハーサルをしていると、この日、オープニングアクトを務める札幌のバンド「The Rock’s」、小樽のバンド「L.S.D」が会場入りしてくる。リーゼントやモヒカンなど、いかつい連中だが、真剣にリハーサルを見つめる。リハーサルを終え、楽屋で寛いでいる梶浦や延原を始め、メンバーに挨拶をしにくる。彼らが札幌で演奏する際には共演する機会も多く、面識も交流があるという。それ以前にその質問や会話からはTHE MODSやTHE ROOSTERS(Z)などの大ファンであることが窺える。勿論、彼らはそれを隠さず、リスペクトを感じさせる。改めて、札幌という福岡から遠く離れているにも関わらず、福岡発のビートミュージックの影響と熱狂がこの土地にはあることを再確認する。
この日の開場は午後5時30分。会場にはすすきのでは浮きそうなロックな連中が集まる。開演時間の6時を5分ほど過ぎて、The Rock’sの演奏が始まる。ギター、ベース、ドラムスという3人組のバンドで福岡発のビートミュージックの影響が濃厚で、いかにもと彷彿させるところもある。しかし、その筋金入り感は半端ないものがあった。彼ら自身、クレイジービートに射抜かれ、この年齢(少なくとも若者ではなく、年季者。何十年も活動している!?)までやってきていることを感じさせる。
続く、「L.S.D」はパンクスピリットをハードサウンドに乗せて歌う。そんな反骨精神を長年、背負い音楽活動をしている。“ピンクのちょうちん”なんか、俺たちには似合わないと、お子様向けのイベントに毒づくところが頼もしい。彼らは3人組ながら、よく見るとドラムスとギター2本でベースレス。ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンを意識しているそうだ。
北海道から福岡への愛あふれるステージを見せてくれた彼らの演奏後、ブレイクが入る。その頃には気づくと、会場は多くの観客で埋まる。午後7時30分にKJ&トントンマクートのステージが始まる。彼らはドクターフィールグッドやキャンドヒートなどがブルースやロックンロールの古典を甦らせたように、既に同曲そのものも古典となる「TALKING ABOUT YOU」や「Whiskey headed woman」など、ビンテージなロックンロールの名曲を畳みかける。ルーツミュージックは彼らにとってはお手のもの、いまの彼らがあるのはロックの根っこを貪り食ったからだ。
トントンマクートは全員、歌うと同時に全員、MCをするという“掟”がある。1日目はKJこと、梶浦雅弘がその洗礼を受けたが、2日目は岡本雅彦がその“洗礼”を受ける。前日は当日現地入りのため、歌もMCもという準備は整っていなかったが、同日は準備万端、お膳立ては出来ている。彼が歌うのは“穴井大先輩が大好き” というシーナ&ロケッツの「レイジー・クレイジー・ブルース」である。シーナの歌を真似るのは難しく、似ているようで似てないものの、シーナらしさがところどころに顔を出す。笑いながらも思わずキュンとする、これまた、“絶品”である。岡本はMCも任される。梶浦が歌うサンハウスの「スーツケースブルース」の前説を淀みなく、務める。岡本によると、梶浦とのセッションはこの夏、3回目だという。当然といえば当然、相性はばっちりである。実は歌うことに一番、抵抗していたのは梶浦だった。THE MODSやTHE ONE NIGHTSなど、ほとんど歌ってこなかった。歌ってもファンクラブのイベントくらいだという。延原に懇願されるも頑なに拒否していた。どうせ歌うなら然るべき場所(彼曰く“ミュージックステーション”らしい!?)でと言っている。しかし、断ったら当日のMCで何を言われるかわからないので、渋々と承諾したようだ。この日も延原が散々、梶浦をいじり倒している(笑)。楽屋では延原と下山が前日、梶浦が披露したプライベーツの「リメンバー」のフレーズをいきなり弾いて、梶浦に歌わせようという“悪巧み”の相談までしていた。
勿論、みんなが心配している穴井の話題もふんだんに出てきた。怪我をして入院中だが、病院の食事が美味しくなく、お菓子などを持ち込もうとしたことが話された。着替えに忍ばせて、という作戦もあったらしい。実は札幌行きを一番、楽しみにしたのは穴井だった。行く前から下山や延原にあれを食べよう、これを食べようと、言っていた。下山や延原は、そんな穴井のため、ライブ後に食べた北海道名産の美味しいものを毎回、撮影して、彼に送っていたという。その度に羨ましいと返ってきたそうだ。あまりに羨ましく、食べられなかった口惜しさからか、思わず、無言になることもあったようだ。相変わらず、本人不在ながら穴井は話題の中心、流石、噂の男だけある。
泉谷しげるの「春夏秋冬」(1988年版)、THE ROOSTERSの「SAD SONG」のカヴァー(両曲ともオリジナルのギターは下山淳)は、下山淳というミュージシャンの底無しの才能と聞くものの心と身体を抉る、凄みのようなものを感じさせた。彼に導かれ、4人のグルーヴが大風と大波を起こし、いろんなものを一瞬にして音の桃源郷に放り込む。
また、延原の歌うドアーズやストーンズのカヴァーも完全に自分のものにしている。考えてみれば、デビュー前から彼を見ているが、とてつもない怪物ミュージシャンに育ったものだ。山口冨士夫や柴山俊之の薫陶を受けただけのことはある。勿論、年齢を経ても爽やかさや礼儀正しさは失わない。そんな突付きの良さが人たらしの如く、相手の懐に飛び込み、多くのミュージシャンに愛される由縁ではないだろうか。
本編最後は説明不要、問答無用の「DO THE BOOGIE」が放たれる。観客を絶頂体験へと導く。
そしてアンコールは、大きな拍手とマスク越しの歓声で湧く会場へ山部“YAMAZEN”善次郎のオリジナルであり、TH eROCKERSのナンバーである「キャデラック」をぶち込み、さらに「ビールスカプセル」で福岡発のビートミュージックの真髄を本家に迫る勢いで観客へばらまいていく。そして、お馴染み「GOT MY MOJO WORKING」で締め括る。
札幌が福岡になる――そんな錯覚を抱かせる。札幌は北の国とはいえ、猛暑だった。暑い夜をKJ&トントンマクートがさらに熱くする。こんな風景を穴井にも見てもらいたかった。それ以前にその場にいて欲しかった。その場にいた誰もが、そう思ったはずだ。是非、穴井には雪辱を期してもらいたいもの。いっそうのこと、KJ&トントンマクートとアカネ&トントンマクートの揃い踏み、そこに穴井と岡本もいる。そんな祭りを開催して欲しい。開催場所はまず札幌になるが、同所に関わらず、全国ツアーもありかもしれない。全国から多くの観客が集まってくるだろう。
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前述通り、この8月11日(木・祝)は福岡「 public bar Bassic.」、8月12日(金)は熊本「 ONE DROP」で、穴山淳吉の発展形でトントンマクートとは親戚筋になるEli and The Deviantsの “Road to nowhere TOUR 2022”が行われる。同ツアーも残念ながら穴井は欠席のまま、その穴をアレルギーにいた中西智子が埋めることになった。
穴井仁吉は8月5日(金)に自らのSNSに以下のメッセージを掲載している。少し長くなるが、引用しておく。
「ご連絡ご報告が遅れましたが~7月末に左手首と左足付け根の骨盤を骨折してしまいました。7月末からの~札幌クレイジーモンキー~KJ&トントンマクートは岡本に弾いて貰いました。パブロックやパンクロック、ブルースにロック&ロール大好きな岡本に弾いて貰って感謝しております~関係各位の皆様、本当にご迷惑ご心配をお掛けして申し訳有りません。8月11日12日の福岡熊本~Eli & The Daviantsで復帰出来るかなァ~なんて考えたりしてましたが~全然無理でした~今回は中西智子さんにEli & The Daviantsでベースを弾いて貰います。中西智子さんとは、アレルギーに居た頃、MOSQUITO SPIRALでご一緒した事が有ります~問答無用にカッコ良かったッス。是非8月11日木曜日福岡ベーシック~8月12日金曜日熊本ワンドロップでEli & The Daviants with 中西智子を是非とも観に行って欲しいッス。上手く時間が合えば~太宰府近くの八ちゃんラーメンに寄って~熊本に行くと宜しいかと。ラーメン大好き中西智子さんに食べて頂きたいです~。中西智子さんヨロシクお願い致します~感謝ッス。ありがとうございます😭僕は9月19日月曜日新宿紅布のアカネ&トントンマクートで復帰出来るように~入院~車椅子生活とリハビリに頑張って行きます~。」
いずれにしろ、穴井仁吉の一日も早い回復と復帰を祈っている。新しい“穴井仁吉伝説”、並びに新たな“トントンマクート伝説”、新たな“Eli & The Daviants伝説”を作って欲しいもの。期待している。
なお、福岡の「public bar Bassic.」での公演は配信も行われる。行かれない方は、是非、配信でご覧いただきたい。また、熊本まで行かれる方は、1日空くが、8月14日(日)には鮎川誠の故郷、福岡・久留米の石橋文化センター共同ホールで『シーナ&ロケッツ/PLAY THE SONHOUSE /The 0942ー 久留米SUMMER BEAT 2022』が行われる。地元で見る彼らの演奏、格別なものがあるのではないだろうか。福岡のロッカー達は伝説を更新し続けるのだ。
Eli and The Deviants “Road to nowhere TOUR 2022”
8/11(木・祝)福岡 public bar Bassic.
open18:30/start 19:00 前売¥ 5,000/ 当日 ¥5,500
ツイキャス配信決定!
2022年8月11日(木・祝) 19:00
視聴期限: 2022年8月25日(木) 23:59 まで
8/12(金)熊本 ONE DROP
open19:90/start 20:00 前売¥ 5,000/ 当日 ¥5,500 https://one-drop.org 出演:Eli and The Deviants [Gu.Vo:下山淳(ROCK'N'ROLL GYPSIES), Ba:中西智子(アレルギーetc.),Gu:ヤマジカズヒデ(dip), Dr:KAZI(ZZZoo),Vo:武田康男(蜘蛛蜥蜴/ex.HYSTERIC SUZIES)]
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